「建築物を解体する前にアスベスト調査を実施することが義務化」
1955年頃から2005年頃までにかけて、
建物の火災防止用の建材として「アスベスト(石綿)」が使用されていました。
しかし、飛散したアスベストを吸い込むと肺癌や悪性中皮腫などの原因となるリスクの高いことが判明し、
2006年に0.1重量%を超えるアスベスト含有製品の製造、使用が禁止されました。
●解体工事を行う前のアスベスト調査の義務化
解体工事におけるアスベストの飛散防止を図るための大気汚染防止法の一部が改正され、
建築物の解体工事をする前に、有資格者によるアスベスト調査が義務化されました。
また、解体工事に着手する前に、都道府県や政令市などへのアスベスト調査結果の報告が義務付けられました。
さらに、自治体においては業者に対する作業基準の遵守への対策が強化されています。
●解体工事前のアスベスト調査の流れ
アスベスト調査は以下の手順で行われます。
1)アスベスト調査を専門業者へ依頼
2)専門業者が解体工事前にアスベスト調査を実施
3)アスベスト調査の結果を管轄自治体に報告
4)解体工事期間中にアスベスト調査の結果を掲示
解体工事やリフォーム工事を行う場合は工事規模の大小に関わらず、
設計図書や目視によるアスベスト調査を行わなければなりません。
つまり、工事を請け負う業者は解体工事の着工前に、
「目視」によって建材が設計図書などと整合していることをチェックしなければなりません。
また、使用されている建材を特定し、
メーカーに成分情報等を確認することでアスベスト使用の有無を明確にすることが必要です。
設計図書が無い場合は目視の確認のみで構いませんが、目視での確認が困難な箇所であっても、
目視が可能な場合は調査を行わなければなりません。
そして、調査結果を解体工事現場に掲示するとともに、3年間その記録を保存することが義務付けられています。
ちなみに、アスベストの使用が禁止された2006年以降に着工された建築物に関しては、
着工日や製造日等の確認を行うことで事前調査に代えることができます。
アスベスト調査のおおまかな流れは以下になります。
①設計図書等による書面調査
②現地目視調査(アスベスト含有懸念建材の使用範囲と調査方法の確認)
③サンプリング
④アスベスト定性分析
⑤報告書の作成
●アスベストの除去工事
アスベスト除去工事は以下の手順で行われます。ただ、建築物の状況や周辺環境によって多少異なる場合があります。
①近隣への挨拶
②引き込み配管、引き込み配線の撤去
③足場の組み立て、飛散防止用シート掛け
④建物内部の残置物、畳、襖、障子、住宅設備機器等の撤去
⑤アスベストの除去
⑥建物内部(その他の内装材、サッシ等)の解体
⑦建物本体の解体(小屋組、柱・梁等の構造躯体、基礎等)
⑧廃材の分別、収集、搬出
⑨地中障害物の有無の確認、整地
実際のアスベストの除去作業としては、室内の天井材や壁材、屋根材、外壁材などの
アスベスト含有建材を撤去します。
また、作業においては水や飛散防止剤を撒き、作業箇所周辺の湿潤化を行います。
必要に応じて、水硬性セメントを使って固化する方法も採ります。
ちなみに、除去工事終了後には作業場の隔離を解く前に、
有資格者によるアスベスト等の取り残しの無いことの確認が法律で義務付けられています。
そして、除去したアスベスト含有建材はアスベストが飛散しないよう丈夫な袋や容器に密閉して保管し、
内容物がアスベスト廃棄物であることを明示します。
また、除去したアスベストの運搬、処分は許可を受けた正規の産業廃棄物処理業者に委託して適切に処分します。
●まとめ
大気汚染防止法の一部が改正され、解体工事を行う前にアスベスト調査を行うことが義務化されました。
改正によって罰則が強化された他、都道府県等による立入検査の対象が拡大されています。
なお、調査記録は3年間保管しなければなりません。
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